今回は、肘関節脱臼についてご説明します。
肘関節脱臼は肩関節の次に頻度が高く、靭帯損傷や骨折、神経損傷などを合併することも多いです。
分類としては
後方脱臼・前方脱臼・側方脱臼・分散脱臼がある。

画像出典
“全国柔道整復学校協会監修
柔道整復学・理論編(改訂第5版)”

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“全国柔道整復学校協会監修
柔道整復学・理論編(改訂第5版)”
後方脱臼が1番頻度が高く、次に側方脱臼が時にみられ、その他は稀です。
今回は1番多く見られる後方脱臼について説明したいと思います。
後方脱臼は転倒して腕を伸ばした状態で地面についたときに起こることが多いです。
症状は、転倒直後から肘が軽く曲がった状態、もしくは伸びた状態でバネのように固定され、自動での運動が不能になります。
そして肘頭が著明に後方に突出し、腫脹や痛みが強く現れます。

整復はできるだけ早く行います。
整復すると他動的に平滑な肘関節運動ができるようになります。
整復後は3週間ほどギプスや三角巾で固定し、その後自動運動のリハビリに入ります。
また、整復が遅れたり固定がキツすぎたりするとフォルクマン拘縮(後述します)が現れることがあるので注意が必要です。
※フォルクマン拘縮

フォルクマン拘縮とは骨折や脱臼などの外傷の合併症です。
筋肉は、いくつかまとまって筋膜や骨、筋間中隔に囲まれて区分けされており、その区分けされた区画のことをコンパートメントと呼びます。
[]コンパートメントの図
このコンパートメントの内部は限られた空間であり、そのなかにある深部血管が外傷による著しい腫れや出血で圧迫され、血行不全を起こします。
これをコンパートメント症候群と呼びますが、フォルクマン拘縮はそれが前腕屈筋群に起こった状態のことをいいます。
症状は6P(英語にすると全て頭文字がP)と呼ばれる
・疼痛
・知覚異常
・麻痺
・腫脹
・脈拍喪失
・蒼白
が見られます。
フォルクマン拘縮を発症した場合は有効な治療法はなく、手関節や手指の運動機能に著しい障害を残すことになるので、早期に前腕部の皮膚から筋膜までを減張切開し、コンパートメント内の圧力を減少させることが必要となります。
固定をしていて、「指先の感覚がなくなってきた」「安静にしているのに、痛みがどんどん強くなる」などの症状がある場合には、注意が必要です!!
外傷は細心の注意をしなくてはなりません。
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“全国柔道整復学校協会監修
柔道整復学・理論編(改訂第5版)”