指の骨折
〇指骨とは
手の指骨とは第2~5指ではそれぞれ3個の指骨からなり、近位から基節骨、中節骨、末節骨と呼ばれ、第1指(母指)では中節骨がなく、基節骨と末節骨となっています。(図左)

"画像:全国柔道整復学校協会監修 柔道整復学・理論編(改訂第5版)”を引用
〇指骨骨折とは
基節骨、中節骨、末節骨は各々の指を動かす解剖学的配置が異なるため、それらの骨折の特徴や骨片転位も異なります。治療法も異なります。
直達外力または過伸展や過屈曲で発生しますが直達外力の場合は粉砕骨折となることがあります。過伸展や過屈曲損傷では屈曲変形や転位が生じます。
最も重要なことは、骨片の回旋が少しでもあれば正確に整復することであり、これがだきないと指を完全屈曲した時にオーバーラッピング・フィンガーを生じてしまいます。
(図4・75)
指骨の屈曲転位を放置すると、屈筋腱と伸筋腱のバランスを失い機能障害を残す原因となります。
a.基節骨骨折
比較的頻度の高い骨折です。直達外力、介達外力、どちらの外力でも発生します。
完全骨折の場合はしばしば定型的な掌側凸変形を示します。これにより、屈筋腱を直接圧迫し、さらに伸筋腱や手内在筋腱の緊張のバランスが障害され指関節の運動が制限されるので、正確な整復が必要となります。
発生機序
スポーツ活動による過伸展や過屈曲による損傷が多いです。
※固定期間は3~4週間
⒈骨幹部骨折
症状:近位骨片は虫様筋、骨間筋により屈曲
遠位骨片は背側腱膜により背側転位の掌側凸変形(図左)

"画像:全国柔道整復学校協会監修 柔道整復学・理論編(改訂第5版)”を引用
⒉骨頭・頚部骨折
発生頻度は高くありませんが見逃されやすく、小児に多い骨折の一つです。
骨折した骨頭部は、骨折端を掌側に向けて90°回転し側副靭帯に絞扼され整復が困難となる場合があります。
⒊基部骨折
掌側凸変形を呈するため、骨幹部骨折と同様の整復固定が必要です。(上記レントゲン画像)
b.中節骨骨折
基節骨に比べ発生頻度は低いです。
⒈頚部骨折
小児に発生するまれな骨折で中節骨の頚部に剪断力が働いて発生し、腱の停止部を持たない骨頭が背側に回転することもあります。
⒉骨幹部骨折
骨折部が浅指屈筋腱付着部の近位か遠位かによって逆の変形を示します。(図4・84)

"画像:全国柔道整復学校協会監修 柔道整復学・理論編(改訂第5版)”を引用
症状:腫脹、皮下出血斑、変形、疼痛があり、軋轢音を伴う異常可動性を認めます。
約2週間後に徐々に自動運動を開始、指の他動運動は禁止します。
⒊掌側板付着部の裂離
多くは指の過伸展により発生するスポーツ外傷で発生頻度の高い骨折です。
PIP関節(近位指節間関節)背側脱臼に合併して発生することや単なる捻挫など見逃されやすく、骨癒合不全による掌側不安定性、運動痛及び関節拘縮を残すことがあります。
症状:PIP関節の腫脹、皮下出血斑、運動痛、他動的に過伸展した祭の掌側不安定性がみられます。
※固定期間2~3週間後から徐々に自動運動を開始します。
C.末節骨骨折
指骨の中でも外傷を受ける機械が最も多く、手の骨折の半分以上を占めています。
最も頻度の高いのが第3指、次に第1指です。直達外力が大部分ですが、突き指などの介達外力でも発生します。
症状:腫脹、圧痛、皮下出血斑、遠位部の掌側転位がみられます。(爪下血腫のため強い痛みを訴えます)
※固定期間は約2~4週間
分類(図)

"画像:全国柔道整復学校協会監修 柔道整復学・理論編(改訂第5版)”を引用
骨折の場所により骨片転位が異なります。
①深指屈筋腱付着部より近位
近位骨片:背側転位または原位置にある
遠位骨片:深指屈筋の作用により掌側転位(図4・87)
②深指屈筋腱付着部より遠位
筋力に左右されず爪に保護され、転位がほとんどないことが多い(図4・88)

"画像:全国柔道整復学校協会監修 柔道整復学・理論編(改訂第5版)”を引用
たまるやでできる治療
近隣の病院にてレントゲンを撮影していただき、骨折部位・損傷状況を確認後、徒手整復を行い、転位しないために固定具を作成します。
あまりにも転位がひどい場合は指の専門医に診察して頂き手術適応になる場合もあります。
電気療法は微弱電流(マイクロカレント)と超音波を骨折モードでかけ、修復を促します。毎日ご来院いただき、最初の2周間がとても大切になってきます。電気療法を行い、衛生面も考慮し巻き直しを行います。
また、レントゲンにて経過を観察し修復状態により固定具を調整したり、治療法を変えます。
〇手指の骨折は脱臼同様に正しく整復されないと可動域制限や変形が残ってしまいます。
必ずすぐに医療機関を受診し、診察、評価、治療、固定をしてもらうようにしましょう。